住宅の依頼先選び
住宅の依頼先選びについて解説します。
住宅を建てる場合の依頼先として、住宅メーカー、工務店、設計事務所があります。
それぞれに長所と短所があるので、特徴を把握することが必要です。住宅メーカーは戦後のプレハブ製造会社を前身とし、その中の数社が鉄骨系のプレハブをつくり、販売を拡大させてきました。その後、木質系やコンクリート系の会社が参入し、それぞれ独自の工法で住宅を提供してきました。資本主義による近代的事業を行い、比較的安定した経営を保っているのが特徴です。また、自社の研究部門を持つなど高い技術力があり、品質の信頼性と安定感が特徴となっています。経営面では営業と宣伝に費用を費やし、住宅展示場の運営も得意としています。そのため、販売する住宅の価格は工務店よりも高額になるのが一般的です。住宅メーカーに依頼する場合は、高い技術力が何のために使われているかを把握することが大切です。せっかくの高い技術力も、自社の利益を高めるためにだけ使われていたのではたまりません。
工務店は日本の伝統的な工法を受け継ぐ大工棟梁が前身です。木造住宅の施工は工務店が得意とするところで、地域との結びつきも深くなっています。工務店の多くは小規模な経営形態を保ち、堅実な営業が特徴です。住宅建築のシェアを見た場合、工務店とそこから派生したビルダーは住宅メーカーを抑え首位の座を保っています。このことから、工務店は依然として日本人から高い評価を得ていると言えます。工務店は主に建築基準法で採用された在来工法(筋違い工法)を用いますが、奈良時代から続く日本の伝統木工法を採用している訳ではありません。工務店に依頼する場合は採用している工法を確認することが求められます。工務店は経営規模が小さいために、工事途中で倒産してしまう危険性を否定できません。工事契約に当たっては他の会社に完成を保証してもらう完成保証を付加することが勧められます。
設計事務所は欧州で発展した形態で、明治時代に日本に取り入れられました。設計事務所の特徴は施工部門を持たない設計専門の組織であることです。独立系の設計事務所は施工者から経営面で距離をおくことで、施主の利益を第一に考えた設計と監理を行うことができます。設計と施工を同一の会社に依頼した場合、手抜き工事に対する監視体制が甘くなることもあります。独立系の設計事務所は手抜き工事を防ぐ工事監理を施工者に気兼ねすることなく行うことができるのです。一方、設計事務所に依頼した場合は設計事務所以外に施工業者との打ち合わせが必要となり、施主の負担が増えることを理解する必要があります。住宅メーカーは自社の利益を第一に考え、工務店は施工のし易さにこだわりがちです。しかし、設計事務所は経営上の独立を保つことで、施主の利益を第一に考えるプロフェッショナルとしての誇りを保つことができるのです。